うつ病・双極性障害などの精神疾患で障害年金は受給できる? 認定のポイントと申請の進め方
1 精神疾患による障害年金の認定は「日常生活」と「就労」で判断される 2 前提として必要な2つのこと 3 診断名によっては原則として対象外になる 4 転院で診断名が変わったときの考え方 5 就労状況は等級認定に直接影響する 6 日常生活の状況はどこで審査されるのか 7 「ひとり暮らしかどうか」は2級の判断で重視される 8 客観的な資料を添えるという工夫 9 申請までにやるべき3つのこと 10 専門家に依頼するメリット 11 受給までの期間の目安 12 まとめ
うつ病や双極性障害、統合失調症などの精神疾患は、外見からは症状が分かりにくく、「自分の状態で障害年金がもらえるのだろうか」と迷われる方が非常に多い分野です。
実際には、精神疾患は障害年金の対象となる代表的な傷病であり、適切に準備をすれば受給できるケースは少なくありません。一方で、診断名や就労状況、日常生活の状況の主治医への伝え方によって結論が大きく変わりやすいという特徴もあります。
このコラムでは、精神疾患による障害年金について、認定の考え方から申請の実務、受給までの期間の目安までを整理して解説します。
1 精神疾患による障害年金の認定は「日常生活」と「就労」で判断される
精神疾患の障害年金は、病名だけでなくその症状によって日常生活にどれだけ不自由が生じているか、そして就労にどれだけ制限があるかという観点から等級が認定されます。
等級のイメージは次のとおりです。
| 等級 | 状態の目安 |
| 3級(障害厚生年金のみ) | 身の回りのことはある程度ひとりでできるが、働くことについては一定の制限がある状態 |
| 2級 | 身の回りのことをひとりでできない部分がかなり多く、誰かの援助が必要。一般就労は難しい状態 |
| 1級 | 身の回りのことがほとんどできず、常時援助を必要とする状態 |
3級は障害厚生年金にしかない等級です。
初診日に厚生年金に加入していた方(会社員・公務員の方など)は3級から受給の可能性がありますが、初診日に国民年金だった方(自営業・学生・配偶者の扶養に入っていた方など)は2級以上でなければ受給できません。
この違いは結論を大きく左右しますので、まずはご自身の初診日当時の加入状況を確認することが出発点になります。
2 前提として必要な2つのこと
⑴ 初診日から1年6か月が経過していること
精神科・心療内科などでその症状について初めて医師の診療を受けた日(初診日)から1年6か月を経過していることが必要です。この日を障害認定日といい、原則としてこの時点の状態で等級が判断されます。
なお、障害認定日には該当しなかった方でも、その後に症状が悪化した場合は「事後重症」として請求できる制度があります。
⑵ 保険料の納付要件を満たしていること
初診日の前日時点で、一定期間の保険料を納付(または免除)していることが必要です。未納期間が多い場合、症状が重くても受給できないことがあるため、この点も早い段階での確認が欠かせません。
3 診断名によっては原則として対象外になる
意外に見落とされがちですが、すべての精神疾患が障害年金の対象になるわけではありません。
対象となる主な傷病
・うつ病
・双極性感情障害(躁うつ病)
・統合失調症
・発達障害
・知的障害
原則として対象とならない主な傷病
・不安障害(※)
・適応障害(※)
・強迫性障害(※)
・人格障害
いわゆる神経症圏の疾患や人格障害は、原則として障害年金の認定対象外とされています。したがって、まずは現在の主治医がどのような診断名をつけているかを確認することが非常に重要です。
※神経症圏の傷病であっても、その症状が精神病の病態を示している場合には、例外的に認定の対象となる余地があります。この場合、診断書にその病態が適切に記載されている必要があります。
4 転院で診断名が変わったときの考え方
長く治療を受けていてもなかなか良くならず、他の病院に転院した結果、そこで違う診断名がついた——これは実務上よく起こる問題です。
ケース1 「適応障害」→ 転院後に「うつ病」
現在の主治医がうつ病という診断をしており、その内容で診断書を書いてもらえるのであれば、障害年金の認定の対象になります。あとは症状の重さによって何級が認定されるかという問題になります。
ケース2 「うつ病」→ 転院後に「適応障害」
こちらは難しい問題が生じます。
まず、現在の主治医が本当に適応障害という見解なのかを、念のため確認していただく必要があります。適応障害は原則として認定の対象外ですので、例外的に認定対象となるような病態が実際にあり、それを診断書に記載してもらえるかどうかがポイントになります。
それも難しいという場合、障害年金のことだけを考えれば「病院を変えるかどうか」を検討することになります。もっとも、これは治療の継続性や医師との相性など他の要素にも関わりますので、総合的に判断すべき問題です。
5 就労状況は等級認定に直接影響する
精神疾患の障害年金では、現実にどのような形で就労しているかが、等級に直接的に影響する傾向があります。
| 就労形態 | 認定への影響の目安 |
| フルタイムの一般就労 | 3級の認定も難しく、受給は困難となることが一般的 |
| 障害者雇用、就労継続支援A型・B型 |
3級の可能性があり、状況によっては2級の可能性もある |
| パート・アルバイト(一般就労) | 3級の可能性がある。2級はやや厳しめ |
| 休職中 | 在籍していても仕事はできていない状態であり、該当する可能性は十分にある |
パートで働いている場合
3級は「就労に一定程度の制限がある状態」ですので、パート勤務であれば一般就労でも3級の可能性があります。
2級については一般就労だとやや厳しめに考える必要がありますが、手厚い配慮があるからこそ働けている、あるいは勤務時間が極めて少なく給与も少額であるといった事情があれば、2級が認められる場合もあります。
復職しているが休職を繰り返している場合
現在は復職して働いているものの、休職と復職を繰り返しているというケースでは、どのような配慮を受けながら就労しているかを見ていく必要があります。
障害者手帳をお持ちで、そのことを会社が把握しているのであれば障害者雇用としての取扱いになります。手帳がなく会社に申告していない場合であっても、実際にはある程度の配慮を受けながら何とか就労できているという状況であれば、その内容次第では受給の可能性が出てきます。
家事をしている場合(専業主婦・主夫の方)
家事ができているということは、身の回りのことはある程度ひとりでできるという評価につながりやすく、2級は厳しくなる可能性があります。
ただし、初診日が厚生年金加入中にあり、現在は家事に従事しているという方であれば、障害厚生年金3級での受給が考えられます。
6 日常生活の状況はどこで審査されるのか
就労状況や日常生活の状況は、主に次の2つの書類を通じて審査側に伝わります。
⑴ 医師が作成する診断書
日常生活の状況について、医師が具体的に評価して記載します。家事ができているのか、援助が必要なのかといった点もここに書かれます。
⑵ 本人(または家族)が作成する病歴・就労状況等申立書
身の回りのことをどれだけ自分ひとりでできているのか、あるいは全くできないのかを、自己申告で記載していきます。
見られている具体的なポイント
診断書では、日常生活能力について「ひとりでできる」、「おおむねできるが時に援助が必要」、「援助があればできる」、「援助があってもできない」といった段階で評価されます。たとえば——
・適切な食事:自分でご飯を作れるか、3食を規則正しく取れているか、量やバランスは適切か
・身辺の清潔保持:毎日自発的に入浴できるか、洗濯や着替えが毎日できるか、部屋の掃除ができるか
・社会性:夜眠れず、起きるのが昼になってしまうといった昼夜逆転がないか
うつ病で症状が重い方の場合、夜間に眠れず、起床が昼になってしまうというケースは珍しくありません。そうした状態では社会参加も難しくなりますので、症状の重さを示す一つの要素になります。
このほか、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人との意思伝達および対人関係、身辺の安全保持および危機対応といった項目も評価の対象です。
7 「ひとり暮らしかどうか」は2級の判断で重視される
ひとり暮らしをしているかどうかは、2級に認定されるかどうかの判断で重視される要素です。
2級は「身の回りのことをひとりでできない部分が多く、援助が必要な状態」と考えられているため、ひとり暮らしをしているという事実は、形式的には「身の回りのことはある程度自分でできているのではないか」という評価につながりやすいのです。
そのため、たとえば——
・定期的にヘルパーが来て身の回りのことを手伝ってくれている
・近くに住む家族から定期的に援助を受けている
といった事情がある場合には、その実態をしっかりと医師に伝えて診断書に反映してもらい、病歴・就労状況等申立書にも記載しておくことが極めて重要になります。
8 客観的な資料を添えるという工夫
「自分で書く書類は、どうとでも書けてしまうのではないか」「症状の重さを訴えても信用してもらえないのではないか」というご不安を持たれる方も多くいらっしゃいます。
実際、病歴・就労状況等申立書でいくら言葉を尽くして症状の重さを強調しても、審査側がそれをそのまま評価することは簡単ではありません。最も重要なのは、しっかりと医師に実情を伝えたうえで、診断書に反映してもらうことです。
そのうえで、事案によっては客観的な資料を添えることもあります。
・ひとり暮らしでも日常生活が全く成り立っていないことを示すための、室内の写真
・近くに親が住んで援助していることを示すための、地図上の距離が分かる資料
こうした資料を組み合わせることで、書面上の主張に裏付けを持たせることができます。
9 申請までにやるべき3つのこと
障害年金の申請準備は、大きく次の3つに分かれます。
⑴ 初診日の証明書類を取得する
その症状で初めて受診した医療機関に、受診状況等証明書を作成してもらいます。
⑵ 診断書を依頼し、内容を確認する
現在の状態を正確に医師に伝えたうえで作成してもらうことが非常に重要です。そして、出てきた診断書に問題がないかをチェックする作業も欠かせません。
⑶ 病歴・就労状況等申立書を作成する
発病から現在までの経過、就労状況、日常生活の状況を、自分で整理して記載します。
これらをご自身で進めることも、不可能ではありません。ただし、手間がかかること、また適切な内容の書類になっているかどうかの判断が難しいことは、あらかじめ知っておいていただく必要があります。
10 専門家に依頼するメリット
初診日の証明について
すでに通院していない病院に証明書を取りに行くことは、それ自体が大きな手間になります。さらに、受け取った書類で初診日が正しく証明できているのかを一般の方が判断することは、非常に難しいものです。
最初の病院にカルテが残っていないという場合には、初診日を直接的に証明する資料がなくなってしまいます。そうした場合にどうやって初診日を証明していくかは、専門的な知識を要する場面であり、専門家に依頼するメリットが特に大きい部分です。
診断書について
医師にどのような状態を伝えて診断書を書いてもらうかという判断、そして出てきた診断書の内容に問題がないかという判断は、いずれも一般の方が行うのは容易ではありません。
病歴・就労状況等申立書について
作成に手間がかかるうえ、どのような要素を、どのように書けば適切な内容になるのかが分かりにくい書類です。
年金事務所とのやり取り
ご自身で申請される場合、作成した書類や取り寄せた書類をその都度チェックしてもらうために、年金事務所に何度も足を運ぶことになります。専門家に依頼すれば、この手間も省くことができます。
11 受給までの期間の目安
専門家に依頼した場合の一般的な流れは、次のとおりです。
| 段階 | 期間の目安 |
| 依頼から年金事務所への申請まで | 約2〜3か月(初診日の証明の取り寄せ、診断書の作成期間を含む) |
| 申請から審査結果が届くまで |
平均で約3か月 |
| 結果到達から初回入金まで |
約1〜1.5か月 |
順調に進めば早くて半年、平均すると7か月程度で初回の障害年金が入金されるというイメージです。なお、初診日の証明に時間を要する事案では、もう少し期間がかかることもあります。
12 まとめ
精神疾患による障害年金は、次の点が結論を左右します。
・初診日から1年6か月が経過しているか、初診日にどの年金制度に加入していたか
・診断名が認定の対象となる傷病か
・就労の形態と、受けている配慮の内容
・日常生活を「ひとりで」どこまでできているか
・そして、それらが診断書と申立書に正確に反映されているか
「働けているから無理だろう」「症状を説明しても分かってもらえないのではないか」と、申請そのものをあきらめてしまわれる方は少なくありません。しかし、実際の生活実態を適切に伝えることができれば、受給につながるケースは十分にあります。
ご自身の状況で受給の可能性があるかどうか判断に迷われている方は、一度専門家にご相談ください。













